過保護な彼に愛されすぎてます。
「でも……郁巳くん、私が、まだ女の子が怖いかって聞いたら、怖いって答えてましたし……」
『郁巳くんは、まだ女の人が怖い? 郁巳くんの外見だけを見て近づいてきてる人しか、周りにいないって思ってる?』
そう聞いたのは、最近の話だ。
そのとき、郁巳くんは『いないかな。いないし……いらないとも思ってる』って答えて、女の人が怖いって部分を肯定したハズだ。
……それでも。
一度気付いてしまったら矛盾は頭のなかから消えなくて、気持ち悪さを感じていると、吉原さんが眉を寄せた。
「まぁ……これは、俺から言う話でもないと思うけど。不破と坂井には、ふたりにしかわからない関係があるんだろうし、事情だってあるし」
そう前置きした吉原さんが、一拍置いてから口を開く。
「でも、不破は坂井の前では嘘をついてると思う。高校んときから思ってたけど……あいつは、おまえの気遣いとか優しさを利用してる」
「……利用?」
冷たい単語に思え、そう聞き返した私に、吉原さんは「あー、違う。そういう利用じゃなくて」と続けた。
「つけ入ってるっていう表現のほうが正しいかもしれない。坂井は、不破のトラウマのことをずっと心配してるだろ。で、そのことでなんか約束みたいなこともしてるんだろ?
だから不破は、本当はもう平気なのに、坂井の前でだけは、まだ他人が怖いフリしてるんだろ。おまえの隣を独占したいから」
この話を聞いたのが、少し前だったら。
そんなわけないって、思っていたのかもしれない。
でも……郁巳くんが覗かせる狂気のようなものを知っている今は、吉原さんの言葉を〝まさか〟って笑うことができなかった。