過保護な彼に愛されすぎてます。
「逃がさないようにしてるんだと思う。ひとつでも、自分に繋ぐ鎖を減らさないように、嘘ついてる。
俺にはそう見えてた」
〝鎖〟って表現に、ぞくりと背中に鳥肌が立つ。
いつだったか、私もそう感じたことがあったから。
郁巳くんの優しい微笑みが、柔らかい声が、私に触れる手が。
全部、鎖なんじゃないかって錯覚したことが。
「まぁ、おまえらの問題だから……あんまり首つっこむつもりもないけど。
ただ、もし不破が恋愛関係になりたいって言ってきたとき、坂井は不破の気持ちにどう応えるんだ?」
「え……」
「不破が坂井を好きなのはわかりきってるけど、坂井の気持ちがどうなのかは、見ててもわからなかったから。やっぱり幼なじみとしか見てないか?」
「幼なじみ……」
今まで考えてこなかったことを聞かれ、答えに困る。
いつだって、郁巳くんはそういうつもりじゃないからって、そう片付けてきた問題。
保護者みたいな立場でいたし、自分の気持ちがどうだとか、考えた事もなかった。
私は……郁巳くんをどう思ってるんだろう。
今さらすぎる問題提起に、戸惑いながら「私は……」と口を開く。
「ちいさい頃からずっと一緒なので……いい部分も悪い部分も知ってます。明るくて優しいとか、世話焼きで家事全般こなす手際がいいとか。
うるさくてうっとうしいって思うことは結構ありますけど、郁巳くんの基本部分は、好き、なんだと思います。人として」
自分のなかの感情を整理するように言葉にすると、吉原さんはそれを聞きながら「まぁ、基本的にはいいヤツだしな」とうなづく。
そう、いいヤツだと思う。友達にだって優しいし、モデルの仕事だってきちんとしている。
……でも。