過保護な彼に愛されすぎてます。


「ただ、たまに見せる執着心とか、そういう、ちょっと怖いなって、理解できない部分は……正直、どう受け入れればいいのかが、まだわかりません」

感情の抜け落ちた瞳を向けられれば、怖いと思う。

冷酷すぎる横顔を見れば、なんて声をかければいいのかわからない。

いきすぎた執着を目の当たりにしたら……逃げ出したくなる。

でも、いつもの明るい郁巳くんを知っているから。
そういう、郁巳くんのなかにある狂気から、郁巳くん自身を守ってあげたいとは思う。

逃げ出したいくらい怖くても、その行動が郁巳くんを傷つけてしまうのなら……逃げない。
むしろ、私は郁巳くんを傷つけないためなら、なんでもできるのかもしれない。

この間、咄嗟にストーカーを追いかけたときみたいに。

この気持ちに、なんて名前をつければいいのかは分からないけど。

「恋愛感情とか、正直よくわかりません。でも……もしも、郁巳くんが本当に私を望んでいるなら、私は――」

受け入れてあげたい。応えてあげたい。
郁巳くんが安心して笑える場所でいたい。

そう言葉にしようとしたとき。
食堂にあるテレビが急に騒がしくなる。

見れば、長寿番組って言えるバラエティー番組が流れていて、そしてそこに郁巳くんが登場したところだった。

眩しいくらいの笑顔を向けながらゲストとして紹介される郁巳くんを見て、そういえば今朝、そんな話をされたなと思い出す。
お昼のバラエティー寄りの情報番組に生出演するって。

前、バラエティーに出たとき、もう出たくないって話してたのに、画面のなかの郁巳くんはニコニコと笑顔を浮かべていて、プロだなぁと思った。

「不破、最近テレビよく出てるよなぁ」

同じようにテレビに視線を向けた吉原さんに「そうですね」とうなづく。

番組のなかでは、司会の女性ふたりが、郁巳くんに興味深そうな視線を送っていた。
ふたり掛けのソファに司会が、そしてその向かいにあるひとり掛けソファに郁巳くんが座って、ゲストコーナーがスタートする。

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