過保護な彼に愛されすぎてます。
モデルだとかそういう業界の人が、どれくらいまで飲むのかわからない。
でも、サラリーマンだってこれくらいの時間までは飲むから、まだ会の最中だろう。
だったら、郁巳くんも私を気にしないで楽しんでくれればいいなぁと思う。
そうして、楽しんで……郁巳くんが無事、私離れをしたら……私はどうしようと不意に思い、閉じていた目をそっと開けた。
暗く、やたらと広く感じる部屋が映り、目を伏せる。
私も、恋愛に興味がないなんて言ってないで、いい加減誰かを探したほうがいいのかなぁ。
そもそも、二十二で好きな人もいないなんて、おかしいかもしれない。
いつも郁巳くんが隣にいたせいで、自分のことは考えてこなかったけど、恋愛のひとつやふたつできなきゃマズい気がする。
でも……誰かって言われても。
「誰も思いつかないし……」
好きな人どころか、好きな有名人すらいない。
近くにいる異性なんて、郁巳くんしかいない。
……依存って。
もしかしたら私のほうだったのかな。
そんなことを思っているうちに、トロトロと襲ってきた眠気。
私ってこんなにも異性に興味がなかったんだろうかと呆れながら、吸い込まれるようにして眠りに落ちた。
ふっと、眠りに潜り込んでいた意識が浮上する。
なにかに触られているような気がして……でも、眠くてなかなか目が開けられない。
それでも頬に触れるなにかに誘い出されるように、なんとか瞼を持ち上げた。
まだ半分以上眠っている頭。
そのせいで視界もぼんやりとかすみ、視点が合わない。
だけど「奈央ちゃん? 起こしちゃった?」と声をかけられて、一気に覚醒した。
電気のついていない、真っ暗な部屋のなか。
ベッドの端に座った郁巳くんが私の頬に触れていた。
驚いて声を失っていると、優しい微笑みを浮かべた郁巳くんが、頬を撫でながら言う。
冷たい手だった。