過保護な彼に愛されすぎてます。


離してほしいって言いたかったのに。
された話が話なだけに、今ここで拒絶したら傷つけちゃうんじゃないかなとか、そんな考えが出てきてしまって困る。

また、郁巳くん自身じゃなく郁巳くんの持っている人気や容姿のよさだけを見て言い寄られたなんて話をされたら、心配しないではいられない。

――でも。

郁巳くんの肩口に顔を押し付けられたままじっとしているうちに、あることに気付いて……グッと郁巳くんの胸を押し返した。

郁巳くんが怖いだとか、傷つけてしまうかもしれない、なんて考えは、一瞬にしてどこかに飛んでいた。

――感じたことのない、暗く重たい感情に囚われる。

「奈央ちゃん?」と不思議そうにしながらも腕を緩める郁巳くんと、手を突っ張れるくらいの距離をとってから、じっと見上げた。

「――そんなにうっとうしかったのに、香水の匂いが移るほどくっついてたの?」

郁巳くんのTシャツから香ってきたのは、いつもの郁巳くんの香水じゃない。

もっと甘い……女性用の香水だった。
ムッとするような甘い香りが鼻について、不快だった。

「え……俺、なんか匂いする?」

着ているTシャツの胸元あたりをグイッと持ち上げ、匂いを嗅いでいる郁巳くんにうなづく。

「するし、気持ち悪い」

短く答えると、郁巳くんは焦ったような顔をして説明する。


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