過保護な彼に愛されすぎてます。
◆ side ikumi
◆◆ side ikumi
「ちょ……っ、奈央ちゃん!」
奈央ちゃんに背中を押されるまま、玄関から追い出される。
正直、奈央ちゃんの力なんかじゃ、ちょっと頑張れば立ったままでもいられるけど、わざと力を抜いて彼女の意思に従った。
ぐいぐいと頑張って押している姿を可愛いなぁとこっそりと眺めながらも、焦り顔を作った。
「奈央ちゃんっ」
外の共通通路に出されてから、振り向いて呼ぶと、彼女はわずかに申し訳なさそうな顔をする。
俺が必死な声で呼んだからかもしれない。
奈央ちゃんは、俺の傷ついた顔や、ショックを隠せない声、そういうものに敏感で弱いから。
そうなるように、俺がしたから。
「……ごめん。ちょっとだけひとりでいたいの」
そう、気まずそうに言った奈央ちゃんが「……おやすみ」と告げ玄関ドアを閉める。
パタンと静かに閉められたドアを見つめてから、俺も自室の玄関前に立ち、鍵を開け中に入った。
暗い部屋に明かりもつけずに、まっさきにクローゼットを開け、Tシャツを一枚取り出す。
そして、着替えると、今まで着ていた香水くさいTシャツをゴミ箱に入れてから、ベッドに仰向けに寝転がった。
そうして、ふっと笑みをこぼした。
奈央ちゃんが、あまりに俺の予想通りの反応をしてくれるから、それが嬉しくて仕方ない。
「ごめんね、奈央ちゃん。嫌な思いさせて」
でも、あのTシャツは捨てたから、と心のなかで続ける。
あれは、この夏買ったばかりだし、一万弱したけど、今日でもうその価値はとれたし充分だ。