過保護な彼に愛されすぎてます。
真野さんの移り香をつけてきたのは、わざとだった。
もっと言えば、今日の午後からの情報番組に出たのだって、わざとだ。
奈央ちゃんの会社が昼休みにつけている局は、普段の彼女との会話のなかで知っていたし、彼女が昼休みをとる時間帯も同様だった。
だから、〝この間、テレビはもう嫌だって言ってたし断ってもいい〟と前置きして教えられた番組のオファーに〝いいですよ〟とうなづいた。
奈央ちゃんの目に映るだろうってわかったから。
親交の深い人をひとり、番組に呼べるって話をされて、〝じゃあ真野さんで〟と言ったのも俺からだった。
〝雑誌の宣伝になる〟という、もっともらしい理由をつけたら、マネージャーも〝それがいい〟と怪しまなかったし。
真野さん本人に至っては、それこそふたつ返事だった。
〝私でいいんですか?〟なんて聞かれたから〝もちろん〟と答えると、彼女は嬉しそうに笑っていた。
――〝もちろん〟誰でもいいんですよ。奈央ちゃんの視界に映れば誰でも。
隠した言葉には気づかずに、嬉しそうに笑っていた彼女を可哀想だとは思わない。
そこらじゅうで若手モデルを食い散らかしてる下品な女が、傷つこうがどうでもいいと思うのは、俺の性格が歪んでるからじゃなくて、当たり前の考え方だ。
俺の言葉を誤解してあまりにしつこく迫られたら、冷たい態度で突き放せばいい。
中学の頃、奈央ちゃんを叩いた、あの女にしたみたいに。