過保護な彼に愛されすぎてます。
奈央ちゃんの視界に映ったときのことを考えて、真野さんが俺を〝郁巳くん〟と馴れ馴れしく名前で呼ぶのも放っておいた。
本当は、奈央ちゃんと同じ呼び方をする声に、いちいち舌打ちしたくなったけれど、そこは辛抱強く耐えた。
収録中は、似ても似つかないそこに奈央ちゃんをなんとか重ね、普段、奈央ちゃんに向けるような笑顔を心掛けた。
そして。
いつもは適当に交わしているスキンシップも、今日は逃げずに好きにさせたおかげで、事は予想通りに進んだというわけだ。
俺が撒いたすべての布石を、奈央ちゃんは俺の期待通り、綺麗に拾ってくれていた。
聡明でどこまでも純粋な彼女らしいと思うと、またひとつ笑みがこぼれる。
ひとつだけ……気持ちが昂ぶりすぎて、施錠してあったハズの部屋に普通に入り込むというミスをしてしまったけど、そこはもう仕方ない。
いつもだったら、奈央ちゃんが怪しんでも〝鍵、かかってなかったよ〟と逃げられるタイミングを計ってるのに、今日はその逃げ道を作るのを忘れていた。
奈央ちゃんの部屋に、鍵を開け入り込むことが癖になってしまっているのだから、慣れは怖い。
今後は気を付けないと。
でも、奈央ちゃんも、そこは気にしながらも最後は俺がつけた移り香に気がいっていたから、問題はないだろう。
もしも後から指摘されても、〝実は、心配で合い鍵を持ってたんだ。幻滅させてごめん……〟って話を、死刑宣告でもされたように落ち込んだ顔と声ですれば、なんとでもなる。
実際、奈央ちゃんに軽蔑されたりしたら、俺は本当に死刑宣告を受けたようなもんだから、演技じゃなく素で愕然とするだろうし。
そしたら、奈央ちゃんはそんな俺を見捨てない。
俺の奈央ちゃんは、どこまでも純粋で優しいから。