過保護な彼に愛されすぎてます。
俺は、ずっと、小学校とかそれぐらいから奈央ちゃんが好きだった。
どうにかして自分だけのものにしたいと思っていたし、するつもりだったし、他の男になんて渡す気はさらさらなかった。
態度こそ冷たいことはあっても、基本的な部分がどこまでも優しく純粋な奈央ちゃんは、俺を拒絶することはできない。
〝他人の気持ちの汚い部分を見せられたせいでトラウマを持ち、今も傷ついたままの可哀想な郁巳くん〟っていう意識があるから。
俺の彼女への依存や執着が、過去のトラウマからきていると今も思っているんだろう。
だって、俺がそう演じてきたから。
本当は、俺が奈央ちゃんの隣を譲らなかったのは、ただ単に奈央ちゃんが他の男といることが我慢できなかったからだ。
中学の初め、俺がたまたま同じ時間に帰れなかったとき、同級生の男と並んで歩いているところを見て、〝あ、許せないな〟と感じてからは、どんな事情があっても奈央ちゃんの隣にいた。
でも、変質者に追い回されてるのが理由だと勘違いした奈央ちゃんは、そんな俺に情のこもった目を向けたから、使えるかなと思った。
だから、傷ついた顔を見せることにしたら……それが思いのほかうまくいった。
〝傍にいてほしい〟って言ったら〝いいよ〟って言ってくれるほどに。
小学生初めのころは、多少なりとも他人が怖い時期はあった。
でも、高学年になったあたりからは、〝気持ち悪ぃんだよ〟って鼻で笑える程度になっていたし、それからは一度も、変質者や女が怖いなんて思ったことない。
完全に見下してるから。
なのに、純粋な奈央ちゃんは、俺が傷つき続けていることを疑おうとはしなかった。
ああ、本当に可愛いなぁと口の端が勝手に上がる。
聡明なのに、俺を信じ切っているから、俺の演技に気付かない。
奈央ちゃんは俺だけを拒絶できない。
そう考えると堪らない気持ちになった。