過保護な彼に愛されすぎてます。
同僚からもらったっていう、ケーキバイキングのサービス券を俺が破っても、友達からもらったっていうシュシュを俺が捨てようとしても許してくれたし、俺のいうわがままもきいてくれる。
だからたぶん、俺が付き合って欲しいって告白すれば奈央ちゃんはうなづくんだと思う。
断ったら、俺をひとりぼっちにしてしまうから、俺が可哀想っていう理由で。
でも、それじゃ意味がない。
だから、罠を張った。
『俺を見捨てないでね。奈央ちゃん』
『奈央ちゃんがいないと、俺、生きていけないから』
『もしも裏切られたら……俺、なにするかわからないよ』
気持ちの中にある、淀んだ部分を少しずつ覗かせて奈央ちゃんを困惑させていく過程は少し胸が痛んだけど、仕方ない。
一気に出したら奈央ちゃんが怖がっちゃうし、それはしたくないから。
だからって自分で自分を抑えるなんてできそうもなかったから、奈央ちゃんに慣れてもらうほかない。
奈央ちゃんが怖いって本気で逃げ出さないギリギリを狙って気持ちを吐き出していき、でも同時に逃げ道もつぶしていく。
〝過去のトラウマから抜け出せない可哀想な郁巳くん〟も、忘れずに演じた。
それがあるかぎり、奈央ちゃんは俺を放っておけないってことはわかってたから。