過保護な彼に愛されすぎてます。


そして、追い詰めていくなかで、奈央ちゃんは俺のもんなんだよっていうことを、じっくり伝えて行こうと思った。

奈央ちゃんには俺しかいないんだって。

じっくり伝えて、そしてそれを奈央ちゃんが無意識に理解しはじめたころ、嫉妬を覚えさせ、想いを募らせた奈央ちゃんから俺のもとに来させる。

責任感の強い奈央ちゃんが自ら望んで俺を選んだら、そのさき、彼女から手を放して離れていくという可能性は極めて低いから。

『別に、私に謝る必要も言い訳する必要もないでしょ。だって、そもそもそういう関係じゃないし』
『こんな時間に部屋に入ってこないで。あと……しばらく放っておいて。会いたくない』

自分ではそれと気付かずに嫉妬する奈央ちゃんを思い出すと、口の端が勝手にあがる。

「すげー可愛かったなぁ……」と呟いてから、頭のなかの奈央ちゃんに目を細めた。

もっと意識して、俺のことばかり考えればいい。
そうして、俺のものになればいい。

「さて……何日まで待ってあげようかな」

奈央ちゃんが、俺のなかにある狂気に気付き始めながらも、腹をくくるのにはどれくらいの時間がかかるだろう。

奈央ちゃんには奈央ちゃんのペースがあるだろうし、できればゆっくり考えさせてあげたい。
奈央ちゃんの意思は大事にしたいから。

でも、俺もそこまで気が長い方じゃないから、何日まで待てるか、自分でもわからなかった。

「三日か、五日……一週間は無理かな」

天井を眺めたまま、ポケットに手を入れ、鍵を取り出す。

この部屋の鍵と同じ形状をした、鍵。
もう、何度使ったかわからない、奈央ちゃんの部屋の合い鍵を天井に掲げるようにして見つめてから、それに口づける。

「早くおいで。奈央ちゃん」

冷たい感触は、彼女の唇とは似ても似つかないけれど。
彼女の部屋のモノだってだけで、特別だった。


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