過保護な彼に愛されすぎてます。
two
はぁ……と私の口からため息がこぼれ落ちたのを、吉原さんは見逃さなかった。
すかさず「どうかしたか?」と聞かれ、もう一度ため息をついてから口を開く。
「いえ……なんか胃の下の方がもやもやしてて……状況から判断するに、これってたぶんやきもちとかそういうことなんだろうなって思って、だとしたらあれって八つ当たりだなって」
十四時の食堂。
人の少なさはいつも以上だなぁと眺めていると、吉原さんが「坂井、ちょっと一から説明しろ」と眉を寄せる。
「おまえの今の説明だと、たぶん、四スタートだ。で、五から九をすっとばしてる」
私の前にも吉原さんの前にも、半分ほど残ったA定食、カレイの煮つけが並んでいる。
「つまり、まったくわからない」と言われて、ぼそぼそと郁巳くんとのことを説明し始める。
なんとなく、郁巳くんと真野さんが並んでるところを見てから胃のあたりがおかしいこと。
その日、郁巳くんが部屋にきたとき、真野さんの香水の移り香がしたこと。
それに気付いたら、ムカッと獰猛ななにかが込み上げてきて、郁巳くんの話も聞かずに一方的に追い出してしまったこと。
あとから考えたら……それってやきもちだし、でも、恋心なんて今まで意識したこともなかっただけに認めにくくて、困ってること。
「でも、私の気持ちがどうであって、それに混乱していたとしても、郁巳くんに対して一方的な態度をとっちゃったのは、ただの八つ当たりだったなぁって……」
そこまで説明すると、吉原さんはようやく「そういうことか」と納得したような声で言った。
「だったら謝ればいい話だろ」
簡単に言われて、「だって」と口を尖らせる。