過保護な彼に愛されすぎてます。
私が郁巳くんの部屋を訪れたら……その時点で、今までのことを許すってことになる気がする。
告白したら、不法侵入だとか、ケーキバイキングのサービス券ビリビリされたこととか、そういうの、全部受け入れるってことになる。
これから先、そういう、郁巳くんの異常性を全部受け入れるって約束が、暗にできてしまう気がして……それが怖い。
げんなりとしながら言うと、吉原さんは同情するような笑みを浮かべた。
「たしかに……あれを好きだって認めるのは怖いかもなぁ。なんか世界が変わりそう」
「ですよね……」
半分ほどなくなったカレイの煮つけを見つめていると、吉原さんが「でも」と言う。
顔を上げると、仕方ないなって感じの笑顔を浮かべる瞳と目が合った。
「もう、答えは出てるんだろ? なんかそんな顔してる」
図星を指されて、諦めてため息をついた。
そうだ。答えなんてとっくに出てる。
それこそ、郁巳くんへのやきもちを自覚した瞬間から。
どんなにグダグダ思うことがあったって、私は自分から郁巳くんの存在を切り離すことなんてできない。
気付いたら、そういう風になっていたから。
「私は、どうせ郁巳くんに甘いし、どんなことされたって結局見捨てたりはできないんです。
郁巳くんの依存がどうのってずっと言ってたのに……私にしか懐かない郁巳くんに安心してたのは、私の方だったのかもしれません」
郁巳くんが真野さんと付き合ったら……なんて考えて眠ったとき。
たとえ想像でも、自分が誰かと付き合ったりする姿が浮かばなかった。
だって、今までずっと私の隣には郁巳くんがいたから。
驚くほど、郁巳くんしかいなかったから。
郁巳くん以外、全然しっくりこない。