過保護な彼に愛されすぎてます。
「俺が高校三年のとき、練習後に不破のことを待ってる女がいてさ。あいつ、気に入らないけどモテるから、そんなんしょっちゅうだったし、あんま気には留めてなかったんだけど」
郁巳くんがモデルとして雑誌に載りはじめたのは、高校一年の終わり頃だ。
その雑誌はすぐに校内に広まって、今までだって高かった郁巳くんの人気はまさにウナギ上り状態だった。
だから、吉原さんの言うように、郁巳くんに告白しようとする女子は、校内校外問わず、数えられないほどいた。
まさにハーレムだったと思う。
「女は〝どっか静かな場所で〟って言ってたみたいだけど、不破が面倒くさがって、〝ここじゃないと話聞かない〟とか言って、部室の前で話し始めたんだよ」
「え……それはひどいですね」
十中八九告白だって気づきながらもそんな対応するなんて……と思い顔をしかめると、吉原さんも「だろ?」と同意する。
「最初は、部室のなかにいる彼女いない部員への当てつけかよってイライラしてたんだけど、途中からそんなの忘れてた。
好きだって言う女の告白断ったら、その女が坂井の名前出したんだよ」
「私の?」
「ハッキリは覚えてないけど〝坂井さんなんかより、私のほうが~〟みたいなそんな感じで。
ほら、漫画とかドラマでよくあるやつ。結構自分に自信ありそうな子だったから」
「ああ、なるほど……」
私は、とくに目立つタイプじゃない。いたって普通で、間違っても郁巳くんと並んでバランスがとれるような容姿はしていない。
顔立ちだって派手じゃない。可もなく不可もなくって感じで、髪型だって肩までの長さのストレートと、これも普通。155センチという身長は小柄に入るのかもしれないけれど、それだって普通の範囲内だ。
だから、幼なじみだからって特別扱いされている私に、郁巳くんに想いを寄せる女子が不満を持つのも当たり前だった。