過保護な彼に愛されすぎてます。
吉原さんはありえないみたいに言うけれど、そうじゃない可能性だってある。
私自身、郁巳くんの気持ちがなんてジャンルに分類されるのか、計りかねてる。
必要としてくれているのはわかっているし、私に異常に執着してるのだって身を持って知っている。
でもそれが恋愛感情としてかどうかは、わからない。
恋愛対象として考えたとき、私は自分に自信はないし、真野さんみたいな人と並んだところを見ちゃえば余計だ。
郁巳くんが私以外のひとにあんな風に笑うところは、初めて見たし……特別な人なのかな、とも思うし。
ごちゃごちゃとうるさい頭のなか。
また、胃痛が起こりそうになるから、嫌気がさしてため息を落とす。
今までその手のことはノータッチだっただけに、頭がショートしそうなこんな状態じゃ、自分の答えすら見つけられない。
……それに。
「こんな気持ちじゃ、会えない……」
未だ、やきもちの残る今の状態じゃ、きちんと話もできない。
郁巳くんが、もし、真野さんを選んだとしても、私への想いが依存だけだったって答えを突き付けられても、私を恋愛として必要だってなっても。
どの答えが返されても冷静に受け止められるようになってからじゃなきゃ、顔を合わせられない。
動いたって、感情が突っ走ってぐちゃぐちゃになっちゃうだけだ。
郁巳くんはどうせ不安定なんだから、私がしっかりしてないとダメだ。
そんな風に考えながらマンションのエレベーターに乗り込み、部屋の鍵を開けようとして……すでに開いていることに気付いた。
閉め忘れじゃない。
電気はついていないけど……なかに、郁巳くんがいる。
そう咄嗟に思い、動けなくなった。
だって、まだ気持ちの整理がついていない。
こんな散らかったままの気持ちじゃ会えないって思ったばかりなのにどうしたら――。
焦りながらもそう考えていたとき。
ガチャリとなかからドアが開けられ、郁巳くんが顔を見せた。
私が鍵穴に鍵を入れた音で気付いたんだろう。