過保護な彼に愛されすぎてます。
「奈央ちゃんは頭がいいから、とっくに気付いただろ。俺が好きなんだって」
いつもよりも乱暴な口調にもだけど、内容にも驚いた。
声の出せない私に、郁巳くんが淡々と続ける。
「真野さんの存在に、急に情緒不安定になって、俺を追い出して、そのあと冷静になって考えたら嫉妬だって気付いて。自分の気持ちに気付いたハズだよね。
だから、俺に謝りにくると思って、今まで待っててあげたのに」
まるで、この三日間の私の気持ち全部を見ていたみたいに言い当てる郁巳くんに「なん、で……」と小さな声を出すと、笑みを返された。
「だって、そうなるように俺が仕組んだから」
〝仕組んだ〟
その単語を聞いて、どこかで、ああやっぱり……と思う。
言葉の響きには首のうしろがぞわっと寒くなるのに、納得してしまうのはなんでだろう。
「奈央ちゃんが俺以外の男なんて考えられないようにって、ずっと思ってきた。
どうにか奈央ちゃんの生活とか、潜在意識のなかに俺を埋め込めないかなって、奈央ちゃんが無意識のうちに俺がいなきゃ生きていけないようになってたらすげー幸せだなって、ずっと考えて……まぁ、いいや、そんな話はあとでも」
それまで抑揚のない声で、まるで本でも読み上げるように一定のペースで言っていた郁巳くんが、急に声を潜める。
言われたことがよく理解できなくて、どこかぼんやりとしていた頭と耳が、郁巳くんの声の変化を感じ警鐘を鳴らす。
それにハッとした瞬間、郁巳くんの手が、私の顎にかかった。
クッと軽く固定され何もできずにいると、近づいてきた郁巳くんが目を細め……そのまま唇が重なった。
「……っ」
初めてのキスだった。
驚くことしかできない私の唇をペロッと舐めとった郁巳くんが、「全然足りない」とうなされるように言い、再び近づく。
そこでようやく我に返って、郁巳くんの顔を両手で押し返す。