過保護な彼に愛されすぎてます。
「やめて……っ」
「奈央ちゃん。いい子だから、おとなしくして。ひどいことはしたくない」
いとも簡単に私の両手をベッドに押さえつけた郁巳くんに、今さら体格差が憎くなる。
それと同時に、いつもじゃれてきていた時の郁巳くんは、全然本気なんかじゃなかったんだと悟る。
「ひどいこと、今してるじゃない……」
睨みつけて言うと、郁巳くんは困ったように眉を寄せ、口元だけで微笑んだ。
「してないよ。好きな子にキスしただけだし」
「合意じゃなきゃ、そんなの……」
「合意だよ。奈央ちゃんだって俺が好きなんだから。……まさか、違うなんて言わないよね? だったら許さないけど」
一瞬にして部屋の温度が下がった気がした。
私の気持ちを見透かそうとしている鋭い瞳に凝視され、呼吸が苦しくなる。
下がったのは温度だけじゃなくて、酸素濃度とかそのへんもなんじゃないかってくらい、息がしづらい。
それでも……意を決して郁巳くんを見つめた。
「郁巳くんは、いつだって一方的過ぎる。私にだって、言いたいことくらい……」
「あるなら言っていいよ」
やっとの思いで言った言葉を、郁巳くんがさえぎる。
ピシャって、上から押さえつけるような声色に、怖いっていう思いは飛び、だんだんと怒りが湧いてきていた。
だって、こんなの勝手だ。
三日前、部屋から無理やり追い出したのは、私が悪かったかもしれない。
でもその前に、郁巳くんはもっと悪いことをしてるのに。
今回のことにしたって、私はちゃんと〝時間が欲しい〟って言ったのに、それを大人しく待ってられなくて三日で不法侵入したあげく、こんなのはない。
郁巳くんだって……真野さんに、〝郁巳くん〟なんて呼ばせてるくせに。
優しい顔で、真野さんを見ていたくせに。
匂いが移っちゃうくらい、ベタベタしたくせに。
ぐわっと込み上げてきた想いに、涙が滲む。
この三日間、ずっとどうしたらいいのかわからなくて持て余してきた、ドロドロした感情が、口をつく。