過保護な彼に愛されすぎてます。


人気があるってわかっている郁巳くんに告白する子は、自分に自信があって可愛い子が多かったから、〝坂井さんより私のほうが~〟なんて、そんな話になってもなんら疑問はない。

パスタをくるくるとフォークに巻き付けていると、吉原さんが「その子が〝坂井さんなんかより〟って言った途端だよ」と苦々しく笑う。

「あいつ、女相手にしてるとは思えないような低い声で〝奈央ちゃんを侮辱するつもりなら、覚悟してから言ってね〟って。〝俺、女だからって手加減しないよ〟とか言うから、本気で止めにいこうか迷った。
今にも殴りかかるんじゃないかと思ってあん時はびびった」

そんなことがあったのか……と思うと同時に、ぞわっとしたものをお腹の奥のほうで感じる。
その気持ち悪さに眉を寄せていると、吉原さんが続ける。

「坂井を引け合いに出す女もどうかと思うけどな。それにしたってあんな怒気含んだ声で威嚇しなくてもいいだろって……そん時が最初だったな」
「最初、というと……」

他にもあるような口ぶりに聞き返す。

「文化祭でサッカー部が団子屋しただろ。で、坂井が友達と遊びにきたとき、坂井に絡んだ部員を殺すような目で見てたり、そのあとで〝奈央ちゃんは俺のだから〟みたいなこと言って釘差してたり。
一回、気付いたら、もうその後はそんなんばっかだったな」

力なく笑う吉原さんに「なんか、郁巳くんがすみません」と謝る。

吉原さんはサッカー部の部長だったし、いろいろ気苦労をさせたに違いない。


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