全てが終わりを告げる時
彼女──綾瀬実栗が転校してきてから数日が経った今


この学校で色々なことが変わった



一つ目は人々の休み時間の過ごし方


休み時間を告げるチャイムが鳴ると


クラスや学年、性別に関係なく、彼女の周りに
多くの人間が集まり


彼女に話しかけたり、その容姿に見蕩れたりしている


それは昼休みだけでなく、授業の合間というたったの数分間でも変わらない



二つ目は、この学校で密かに行われているという〝人気投票〟の変化


未來の話では


毎週水曜日に、この学校の中で飛び抜けて派手な〝Star's〟と呼ばれるグループの人間が


この学校で〝一番人気な人〟を決めているらしい


〝Star's〟なんて、派手なグループが付けそうな、ありきたり過ぎる名前で、正直、馬鹿馬鹿しい


まあそれは置いておくとする


そして今まではこの学校の生徒会長である、


〝倉渕羽津摩(クラブチ ハヅマ)〟という人物が一位をキープし続けていたが


今週、その連勝記録のようなものが、綾瀬実栗によって破られたらしい


聞いただけの話なため、私にはよく分からないが


生徒会長は、相当なショックを受けているという



三つ目は、この変化の張本人、綾瀬実栗について


初日、恐怖を覚える程の無表情だった彼女は


日が経つにつれて、表情が一つひとつ増えているのだ


本当に一日経つと一つ、また一日経つと一つ、という風に


傍から見れば、この学校での生活に慣れてきて緊張が解けたように思っているのかもしれないが


私にはまるで、日を重ねる度に表情を一つずつ覚えていっているように見える
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