全てが終わりを告げる時
「また、16世紀半ばのスペインで、エルヴィラという女性が、拷問にかけられた時の会話の記録が残っているというので、興味のある人は調べて……」


ガタンッ!


「ひ、雛桜さんっ? どうしましたか……?」


いきなり立ち上がった私に、教師も生徒も驚いて視線を向ける



「……っすみません……

気分が悪いので、保健室へ行ってもいいですか?」


恐らく顔面蒼白だろう私を、教師が引き止めることはなく、私は逃げるように教室を飛び出した



階段を駆け下りながらも、脳裏の記憶は流れ続ける


保健室の扉を引き、中へ入ると同時に、私はその場に膝をついた



幸い養護教諭はおらず、中はしんと静まり返っていた


過呼吸気味な呼吸を整えようとするが、上手く息が吸えず、ヒューヒューと喉が嫌な音を立てる


っ苦しい……


倒れそうになったその時



「───雛桜!?」


背後から、聞き覚えのある声がした


振り返れば、驚いた顔の生徒会長───倉渕羽津摩が立っていた



「っ大丈夫か!?」


そう言って私を助け起こすと、近くにあった椅子に座らせられる


「落ち着いて、深呼吸しろ」


倉渕羽津摩の指示に従うと、次第に呼吸が正常になっていった



「……ありがとう」


そう言えば、彼は小さく首を振った


「……どうしてここへ来たの?」


「ああ、体育で突き指をしてな」
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