全てが終わりを告げる時
そう言いながら、水道へと向かう倉渕羽津摩


「!! ……ごめんなさい。

私のせいで時間を取らせてしまって……」


突き指の応急処置は、1分以内に行うべきだと、昔、お父様に教えられた



「雛桜が気に病むことはない。

元々は俺の不注意が原因だからな」


こちらへ戻ってくると、棚に置かれていたテーピングテープを、器用に自分の指に巻き始める


それを静かに見つめていれば、慣れているのか、ものの数十秒で綺麗に巻き終えた



「……隣、いいか?」


道具を片付けた後にそう言われ、こくりと頷く



私の隣の椅子へ腰を下ろした彼は、すぐさま深く、頭を下げた


「……昨日は、すまなかった」


固まる私に、彼は続ける



「実はあの後、外へ出た途端に、王寺に怒られたんだ。

『君は本当に、人をまとめる立場の人間なのかい?

たった一人の心すら、読み取れないっていうのに?』とな。 それも笑顔で」


あれは怖かったと、頭を下げた状態で倉渕羽津摩は話す



「それから暫く、俺は彼に、あの組織と現状について聞かされた。

俺は公にされた情報しか知らなかったから、心底驚いた。

〝力〟を持つ者ならば、人を選んでいる余裕は無いということを聞いて、雛桜に怒鳴った自分を酷く恥じた」


「本当にすまなかった」と謝る彼に、顔を上げてと私は言う
< 103 / 133 >

この作品をシェア

pagetop