全てが終わりを告げる時
「箏の席は、窓側の一番後ろだ」


担任教師への返答はなく、静かに私の横の通路を通り、そして席へ着いた



「今日は─────」


と担任教師が連絡事項を述べているが、

転校生が来た日に、そんな話を真面目に聞いている生徒はいなかった



HR終了後の、5分間の休み時間


やはり、転校生の周りには、人だかりができた


しかし……



「ねえねえっ、中国ってどんなところ?」


「アカウント交換しよー!」


「誕生日いつ〜?」


そう聞いてくる生徒達を無視し、箏美玲は机に突っ伏した


「えっ……あの……」


「ど、どうしたの……? 具合悪い感じ?」


誰の問いかけにも、応じようとしない



「───顔は似てるけど、やっぱり実栗っちの方が性格良いね」


「だよねー、実栗ちゃんは神だもん」


次第に人だかりは崩れ出し、徐々に綾瀬実栗の方へ移動していく



「ちょ、ちょっと、そんな言い方は……

た、体調悪いだけかもしれないよ??」


中にはそんなことを言う女子生徒もいたが、彼女もやはり、綾瀬実栗の方へ歩を進めていた



所詮は口先だけなのか、と眺めていれば、箏美玲がむくりと身体を起こす


その顔は、疲労感溢れる、心底面倒くさそうな表情だ



箏美玲……


綾瀬実栗とは反対に、彼女は人付き合いを嫌うようだ───



ふと空を見上げれば、綾瀬実栗が転校してきたあの日と同じように、

黒い物体が一つ、宙を漂っていた───
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