全てが終わりを告げる時
そんな日の昼休み、慎也からの連絡があった


『1棟1階の西階段前へ来て』


目的が書かれていないその簡素な文章に、首を傾げる


取り敢えず指定された場所へ向かえば、そこには慎也と羽津摩がいた



「どうしたの? こんな場所に呼び出したりして」


私の疑問に、慎也が答えた



「実はね、僕がこの学校に来た日から、ずっと綾瀬実栗について調べていたんだ。

でも……不思議なことに、殆ど何も出てこないんだよ。

普通、僕がここまで調べても出てこないなんて、ありえない」


眉間に皺を寄せる慎也を眺めながら、私も頭を悩ませる



慎也が自分の実力を自負しているのは、単に自信過剰なわけではない


知恵や知識が桁外れな彼は、ハッキングも得意としており、

私が生きてきた中でも、慎也より優れたハッカーやクラッカーは、一度も見聞きしたことがないのだ



慎也の力を以てしても、出てこないとなると……


綾瀬実栗は、余程重大な何かを厳重に管理しているのか、

それとも、寧ろ反対に何も無いのか


どちらにせよ、彼女が〝普通〟でないのは確かだ



「…………ああ、話が戻ってしまった」


慎也がはっと顔を上げる



「そこで僕は考えた。

───インターネットに載せられる情報はともかく、学校の書類ならば、何かしら書かざるを得ないのではないか、とね」


だからこうして、この場所に来たんだ、と慎也は話す
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