全てが終わりを告げる時
「───おっと、時間がない。

倉渕会長、さあ始めて」


何かを誤魔化された、わだかまりが微かに残ったが、雑念だと割り切って全て追い出す



「ああ…………よしっ、行くぞ」


そして羽津摩は……


目の前から、姿を消した


…………


数えること、数十秒


目の前に再び、羽津摩が姿を現す



「書類は見つけられたかい?」


慎也の問いに、安堵の息を漏らしながら彼が頷く


「ああ、バッチリ記憶してきた」



丁度その時、職員室の扉が開き、何が起きていたのか知る由もない校長が出てきた


「───ギリギリセーフってところだけど……

成功だね。 お疲れ様」


それを陰から眺めて、慎也はにこやかにそう言った



「……それで? 何か分かったの?」


私が聞けば、羽津摩は一瞬にして、その表情を曇らせた



「それが……おかしいんだ。

名前、生年月日、血液型は記されていたが、それ以外は全て空欄だったんだよ。

保護者名も、住所も、前の学校のことも。


そんなことがあっていいのかと、試しに他の生徒のものも、ざっと見てみたんだが……

そんな生徒、他には一人もいなかった」



「どういうこと?

そのままの状態ということは、校長も承諾しているということでしょう?」


「俺にも分からないんだよ!」


苛立ちを隠さない羽津摩に、私も慎也も困惑する



「───取り敢えず二人とも、今日はここまでにしよう。

もうすぐ昼休みが終わるから、教室へ戻らないと」


慎也の言葉で、それぞれが各自の教室へと戻っていった
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