全てが終わりを告げる時
「未來は、嘘がとても苦手だったわ。

何でも素直に聞いてきて、何でも隠さず話してくれた。

そんな純真無垢な彼女だったからこそ、私は心を許すことができたのだと思うの」


落ち着きを取り戻した私は、穏やかな口調で話す



「さっきから偽者扱いして、いつまで私を疑うの?

輝祈の知ってる私は、全部ただの〝役〟だったん……」


「あなたこそ、いつまで未來を否定する気?

あなたは、未來とは正反対な人間……いえ、生き物なのよ。

いい加減、その姿も元に戻して。

綾瀬実栗……いえ───エニス」


その単語を聞いて、綾瀬実栗(エニス)は目を見開いた


そしてすぐに、その姿を綾瀬実栗のものへと変化させる



「驚きました。

まさか、私の正体に気付いていたとは……

……ですが、私が逃亡したという情報は、まだ公には晒されていないはず。


何故、それを知っているのです。


貴方はいったい、何者なのですか」


「その質問には、答えられないわね」



一拍の間を置いてから、今度は私が問いかける



「未來は……どこへ行ったの」


「行った、というよりは、成ったと言うべきでしょうか。

伊勢崎未來は、この砂の一部となりました」


「っ……そう……」


一度、目を瞑り、そして開く




「……未來を返して」


「貴方は私の話を聞いていましたよね。

伊勢崎未來は砂となりました。

なので、戻すことは不可能です。」
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