全てが終わりを告げる時
「非力な人間に、何ができると言うのです。

……尤も、雛桜輝祈のような人間が、一斉に攻撃を仕掛けてきたりするのならば、私も太刀打ちできないかもしれませんが」


眉を八の字にし、困ったような顔を、見事に表現した綾瀬実栗


「残念ながら、僕らは輝祈には遠く及ばない。

でも、君が冗談を言うとは思わなかったよ」


「人間の中に紛れ込んでいたのですから、それくらい出来なくては、やっていけませんよ」



…………


一瞬の沈黙が訪れた


「……そろそろ、時間の引き延ばしはよろしいですか」



綾瀬実栗はスッと無表情に戻ると、先程と同じく淡々とした口調で告げる



空気が瞬時に張り詰め、誰かが固唾を呑む音が聞こえた、気がした



「……たとえ最強と恐れられているロボットが相手でも、僕たち四人なら大丈夫だよ」


そう呟かれた柚希の言葉は、私たちを励ますため、というよりも、自分自身に言い聞かせているようだった


直後、柚希は空高く飛び上がると、空中で一回転し、地面に着地した時には、狗神としての本来の姿に変わっていた



「犬にしては大きさが異様ですし、現在、狼にそのような種類は発見されていません。

更に、人間に姿を変えることも出来るとなると、あなたはいったい何者なのですか。

私の後に製作された人工知能なのですか」


興味深そうに柚希を観察しながら、綾瀬実栗は問う


「その質問に答える義理はないよ。

ただ、少しだけ教えてあげるのは、僕は君みたいな酷い奴じゃないし、ロボットでもないってこと」
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