全てが終わりを告げる時
いつもの、愛嬌のある彼とは対照的に、冷めた眼差しで見つめ返した柚希



「益々興味が湧きますね。

手間ではありますが、あなたは少し構造を調べてから消しましょうか」


「っ!!」



獲物を見つけた獣の如く、柚希から目を離さない綾瀬実栗は、右手を彼へ向け、即座にその掌から光を放った



間一髪のところで横へ飛び退いた柚希は、一瞬の隙も見せずに綾瀬実栗へと接近し、その鋭い爪を持つ前足を彼女へ振り下ろした


不意をつかれた彼女の左腕が、鈍い金属音を立てて数十メートル先へ吹き飛ぶ



「……異能力を持ってすれば、君の完璧な未来予測だって、完璧ではなくなるようだ」


私の隣に立ち、臨戦態勢をとった状態で、慎也が僅かに笑みを浮かべて言った



「異能……人よりすぐれた才能。一風変わった独特な能力。

そのような力についての情報は、私のメモリーに記憶されていませんが」


「それもそのはずだよ。

僕らの力は、科学者や哲学者たちには認知されていないからね」



「でしたら尚更、徹底的に調べなければなりませんね」



……視界の端で何かが動いた


見れば、先程吹き飛んだ綾瀬実栗の左腕が、音も無く柚希へと近付いていたのだ


それは瞬く間に柚希へ忍び寄ると、彼の足を掴もうとした


「柚希っ!」


綾瀬実栗の方にのみ集中している柚希に呼びかけると、自我を持った左腕を破壊するために私はそれへ手を翳そうとした
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