全てが終わりを告げる時
燃え尽きた固まりは、塵となって風に飛ばされた


それを見届けてから、私はゆっくり、地面へと膝をついた



気が抜けたのか、頬を雫が伝い、そして荒れ果てた大地にシミをつくる



すると、土から一本の芽が顔を出した


それを見つめ、更に涙が溢れ出す



魔法で自然を取り戻すことはできる


けれど、生き物を蘇らせることはできないのだ



「……この世界にはもう……何もない……っ」


虚しく吐き出された声は、誰の元へも届かない



人間の欲から起きてしまった悲劇は、何の関わりもない人間たちをも巻き込む惨事となって、幕を下ろした



…………


ふと、過去の記憶が蘇る


あることを思い出した私は、再び立ち上がった



髪を結んでいたリボンを解けば、風に運ばれてそれは飛んでいく


見えなくなるまでそれを見送ると、私は胸元の指輪を握りしめた



「お父様、お母様。

どうか、力を貸して下さい」


指輪がほのかに熱を持つ


それを確認してから、私は天を仰ぎ、叫んだ



「───我が名は輝祈。

雛桜家にして、最後の魔法使いなり。

我が命と引き換えに、世界を蘇らせたまえ!」



死ぬ覚悟など、とうの昔にできていた


恐がることなど、何もない



それは、遥か昔に読んだ魔導書に記されていた禁術


けれどもう、そんなことは関係ない


何故ならこの世界に、私を咎める者など存在しないのだから───




───王寺暁人が訂正した文献は、完成したとは言えなかった


正しく書き換えるのならば、こうだ



〝魔法使いが死した時、その魔法使いのことを人間は忘れる


但し、関わりの深かった者を除いて


───最強の魔法使いを例外として〟
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