全てが終わりを告げる時
黒いローブを着て、フードを顔が見えない深さまで被り、カウンターに一人立っていた人間が、少女に声をかけた


「いらっしゃいませ。

失礼ながら、お名前と証をどうぞ」


声だけならば、30代半ばの男性のようだ


「私よ、慎也。 雛桜輝祈」


そう言って少女は、右手の袖を捲り、肘近くに描かれている魔法陣のようなものを男に見せた


男は少しフードを持ち上げ、その〝証〟を確認すると


「...ふっ、久し振りだね、輝祈」


一度笑い声を漏らした後、フードを取り、顔を露にした



青みがかった黒髪に紺色の瞳


端正で若々しいその顔立ちは、とても30代半ばには見えない


「...その声、本当によく作られているわね


とても17歳とは思えないわ」


「あぁ、そうだろう?」



「でも、そこまでする必要はあるの?」


「念には念を、ね

それに、人間を騙すのって面白いじゃないか

完全にバレなかった時に感じる興奮といったらもう……」


きっと後者が、彼にとって本来の目的なのだろう


そう言って、うっとりとした表情をする彼を、少女は呆れたような表情で見つめた



王寺慎也(オウジ シンヤ)


容姿だけでなく、その名前からも印象が強まり


初対面の人間は誰しも、彼のことをどこかの王子様のように思うのだが


段々と話をするようになると、気付くのだ


彼の性格は少々……いや、かなりひねくれている、と
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