全てが終わりを告げる時
医療技術を少しでも進歩させたいと、この睡眠治療の方法を聞きに来る医者が居るが、どんなに頼み込まれても、これが公開される事は無い


否、公開する事ができない、という方が正しい


何故ならこの治療は…………



〝魔法使い〟だからこそ為せる業なのだから



代々受け継がれてきた魔法使いの血を世間に知らせる事は、先祖への裏切り行為だ


更に、魔女狩りが盛んなこの時代に公開するなど、自殺行為とも言える



故に、人間が好きだからこそ診療所を営むお父様とお母様も、こればかりは人間に手を差し伸べる事ができないのだ


始めは心を痛めていたお父様とお母様も、だんだん仕方のない事だと思えるようになり、診療所を始めて五年が経つ頃には、大分慣れてきた



そして五年が経つ頃──私が10歳を迎えたばかりの頃に、事件は起きた───



『お父様! お母様! 見て!


新しい魔法ができるようになった!』


私は手に、形を自由自在に変えられる小さな炎を乗せながら、お父様とお母様の元へと駆け寄った



お父様は私を見ると


『……!? 輝祈!! 今すぐその火を消せ!』


……いきなりそう、声を張り上げた


その慌てたような、怒っているような形相に驚き、思わず魔法が解ける


手に乗っていた炎がすっ、と手に吸い込まれるようにして姿を消した



『……!! ご、ごめんなさぃ……っ』


炎が消えた後も変わらない形相のお父様に、がばっ、と頭を深く下げ、謝る
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