全てが終わりを告げる時
〝こんな残酷な現実、本当は子どもに話していいものなんかではないのだけれど……〟お母様は悲しそうに、そう付け足した



この村にも……魔女狩りの被害が及んだ


その事実に、何も考えられなくなった


『……もう、こうやって幸せに暮らすことは……できないってこと?』


回らない頭をなんとか動かし、必死に考えて紡ぎ出した言葉は、ひどく、震えていた


『ええ、そうね……

急にこの診療所を潰せば、教会の人間はきっと怪しむでしょうから、

暫くはここで暮らすけれど……

様子を見て、この地から離れなければいけないと思うわ』


『そん、な……っ』


まだ幼く、魔力の制御が未熟だった私は、

あまり人間と関わることはなかったため、大切な人との別れがあるわけではない


ただ、この地が気に入っていた

否、好きだった


自然豊かで、淀みのない澄んだ空気が広がっていて、空が綺麗なこの地が


『疑いをかけられた、この村の人間は、きっと今頃、拷問を受けているわ

この診療所は広く知れ渡っていたから、いずれ、教会の人間がやって来るでしょう


だからお願い、輝祈

この終わりの見えない、魔女狩りの悪夢が消え去るまで、人前で……私たちの前で、

決して魔法を使わないと約束して』



『……はい』
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