全てが終わりを告げる時
お母様と約束をしてから数日が経ったある日、診療所のドアを乱暴に叩く者がいた


外はまだ日が昇ったばかりで、この時間帯はいつもなら、しんと静まり返っている……はずだった



外が……村が、騒がしい


騒音で目を覚まし、ベッドの上に横たわっていた身体を起こす


耳を澄ませば、どこからか微かに、大勢の人間の叫び声が聞こえた


嫌な予感がする───否、嫌な予感しかしない


急いで着替えを済ませてから両親のいるだろうリビングへと向かえば、そこには張り詰めた空気と両親の姿があった



『……教会の人間が来る。

距離からして、あと数分といったところだ』


透視でドアの外を確認したらしいお父様が言う


気が付けば、無意識に身体が強張り、両の手のひらを握り締めている自分がいた


『もう……来てしまったのね』


寂しそうに、名残惜しそうに呟いたお母様


『私たちの終わりが、こんなにも早いなんて……』


その後に発したその言葉に、自身の耳を疑った


『───え……?』



だが、少し考えれば分かることだった


現状を理解しているなら、今更驚くことではなかった



教会の人間が来たということ


それは拷問と処刑の始まり───つまりは〝死〟を意味するのだ



『……これから、どうなるの……?』


震える声で二人を見上げる


『……輝祈、あなたは逃げなさい』


お母様が瞳に強い光を宿らせ、言った


『え……? お父様と、お母様は……』


『輝祈』


お父様が私の言葉を遮って名前を呼ぶ


お父様の瞳にも、強く鋭い───決意の光が宿っていた
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