全てが終わりを告げる時
『とうとう……来たんだな』


お父様が悲しげに呟く


すると二人は立ち上がり、お母様は一度離れると、一着のローブを手に持ち戻ってきた


『これは〝力〟を持つ者以外から姿を見えなくする物。

この悲劇が終わるまで、決して脱がないで』


私にそれを着せると、最後にフードを頭に被せられた


外からは、ドアを叩く音とともに、男の怒鳴り声も聞こえてきた


『……おい! 居るのは分かっているんだ!

早く開けろ! さもなくば蹴破ってでも侵入するぞ!!』


『っ……時間がない。

輝祈、お前は裏から外へ逃げるんだ』


『はい……』


拳を強く握りしめる


駆け出そうと、一歩足を踏み出した時


『───待って、輝祈!』


お母様がそう呼び止めた


振り返れば、握りしめていた拳を優しく広げられ、何かを手渡された


手元を見て、渡された物を確認すると


『っ! これ……お母様たちの結婚指輪……』


それは金色に輝く指輪だった


『でもっ、これは……『なら、私のも』


困惑する私の手に、同じ装飾の施された銀色の指輪が乗せられる


『天国へは持って行けないだろうから、輝祈が持っていなさい』


お父様が微笑を浮かべながら言う


『輝祈、お願いだ』


『っ……はい』


返事をした私の手を指輪ごと両手で包み込んだお母様は、諭すように言った
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