全てが終わりを告げる時
『こんな目に遭ってしまったけれど、どうか、人間を嫌いにならないでちょうだい。

皆、魔女狩りによって、誤った娯楽に取り込まれてしまっただけ。

本当は愛と優しさに溢れているのよ。


……人間は道を踏み外してしまいがちなの。

何が正義か分からなくなって、結果、他人を傷付けてしまう。

だからもし、あなたがそんな人間に出会ったら、救ってあげて』


それはまるで、お母様からの遺言のよう───否、本当に遺言なのだ


そう思った途端、目頭が熱くなるのを感じた


けれど、まだ、泣いてはいけない


最後は……涙で霞む視界など、絶対に嫌だ


『……っ……はいっ……!』


指輪を握りしめると、私は外へ飛び出した


もうお父様とお母様は呼び止めなかった


私も、振り返らなかった───



表の通りへ出た私の目の前には、悲惨な光景が広がっていた


『……っ!?』


教会の人間達に抵抗したのか、その形跡が至るところに見られる


殆どの家の窓ガラスが割られ、光を放ちながら地面に散らばっている破片


〝何か〟が引き摺られたために削れている地面


蹴破られたのか、金具が破壊され傾いているドア



そして、家から引き摺り出されても尚、抵抗を続けた痕跡


幾つかの家の壁に飛び散っている───血飛沫



昨日までの、私が好きだった町並みは。 何もかもが澄んでいた村は、もうそこには存在しなかった
< 42 / 133 >

この作品をシェア

pagetop