全てが終わりを告げる時
『では、魔女達に最後の一分間を与える!』


初めに登壇した男が、またもや叫ぶ


〝最後の一分間〟


処刑される直前、受刑者たちに与えられる自己弁護の時間


しかしその実態は、命と引き換えに、合法的に多額のお金を巻き上げる、というものだった


それも、僅かな金持ちが、全財産をはたいてこそ成せるもの


殆どの人間にとって、それはただの〝死へのカウントダウン〟〝無意味な時間〟


本当に単なる〝最後の一分間〟でしかないのだ



受刑者たちが一人ずつ、その時間を与えられていく


そして、恰幅の良い男が一人、受刑者から除外された


富貴な家の生まれで、この辺りでも有名な人間だ


屈強な男が、縛り付けていた縄を解き、彼を解放する


すると彼は、壇上の中央へと自ら足を運び───そして、叫んだ



『わははははっ! 見よ、私は解放された!

所詮この世は財力がものを言うんだ!


いいか、哀れな魔女ども!

この私が見ていてやるから、己の弱さと罪を悔やみながら苦しみ、藻掻き、死んでゆけ!


そして、ここに集まった下民どもよ!

我らを苦しめた魔女の処刑を、存分に見るが良い!!』


『おおぉぉぉお!!』


男の叫びに続き、群衆が雄叫びに似た歓声をあげた



正気の沙汰ではない


誰一人として、この残虐な世界に、微塵も疑問を持ってなどいないようだ
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