全てが終わりを告げる時
こんな風に、事態をただただ静観していて、怖くないわけではない


人が人を無闇に、無意味に殺め、それを人が娯楽として眺めているのだ


しかもその殺められる人間に、決まりなど存在しない


いつかも分からず、唐突に処刑される


そんな恐怖と隣り合わせで、怖くないわけがない



しかし、今はただ、耐えるしかないのだ


もうすぐ世界は変わる


だから……大丈夫


そう思うほかないのだから───



男が壇上から群衆の波の中へと消え、その後も受刑者たちの〝最後の一分間〟が続いた


そして最後に、お父様とお母様に、その〝刻〟が与えられた



『最後に……雛桜家を名乗る、この魔女どもは!

〝睡眠治療〟なる妖しい魔術を、多くの人間に施してきた!

今こそ、裁きの時だ!!』


地鳴りの如く、群衆が叫ぶ


魔術を人間に施してきたことは、嘘ではない


けれど、その魔術によって、多くの人間が救われたことも確かなのだ


それなのに……それなのにっ……


魔女狩りの最盛期であろうこの世の中で、魔術を使用するという危険を冒してまで、人間達を救ってきたというのに、

その人間達に殺められなければならないなんて……



最も質の悪い、裏切り行為だ


恩を仇で返すこの群衆が───人間達が、憎い……憎い、憎い……
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