全てが終わりを告げる時
薪の下へと、松明が差し込まれる


少しの間を置いて、炎が薪へと燃え移った



刹那、群衆の興奮が音となり、声となり───広場に漂う空気を振動させた



燃え広がった炎は、その勢いを徐々に増していき、恐ろしい業火へと変わる



メラメラ パチパチッ


助けてくれっ! 本当は無実なんだ!!


熱いっ! 熱い!! ああ゙ぁあぁあぁあ……


薪の爆ぜる音と、受刑者たちの絶叫が───混じり合う


その不協和音は、聞いているだけで胸苦しくて、息苦しくて


まるで自分までもが、炎に焼かれているような感覚に陥る


群衆は、火刑のクライマックスともいえる、その光景に見入っていた



耐えきれずに、耳を塞ごうと両手を持ち上げた───その時



突如、目が眩むほどの眩しい光に、広場が包まれた


目を細めながら、何事かと周囲を見回す


少しして、目が慣れてきたため、ゆっくりと目を開けると


開けた視界の先───壇上に、光輝く二つの人影があった


目を瞑っているその二人は、お父様とお母様だった


炎は未だ揺らめき続けており、光の中でも、受刑者の身を焦がしているのが見える


しかしそこに、先程まであった〝もの〟は消えていた


悲痛な叫び声も、薪の爆ぜる音も……広場に響いていた音が消えていた


否、おそらく全世界の音が───消えていた
< 50 / 133 >

この作品をシェア

pagetop