全てが終わりを告げる時
そして気付く


いつの間にか、全てのものが動きを止めていた


揺らめいていた炎は、その尖った先端を天へと伸ばした形で固まり


周囲にいた群衆も、目を庇うような態勢で、微塵も動く様子がない


全てのものが、時が───止まっていた



不思議と耳鳴りさえしない、その空間の中


お父様がゆっくりと、口を開いた



『……我らは雛桜家の者なり

我らの命を対価とし、この世界の人間を狂信から覚醒させ、


誤った娯楽に、終わりを告げよ───』



その呪文を詠唱し終わった直後


お父様とお母様を根源とし、より一層眩しい光が、世界を包み込んだ



しかし、その光は数秒後には消えていた


再び目を開けた時には、先程までと同じ広場があった


先程と、何ら変わりない


否、一つだけ違うところがあった


壇上にある、受刑者を縛り付けていた柱が、少なくなっていた


先程までと比べて、2本減っていた



ドクン、心臓が嫌な音を立てる



光が消えた後から、本当は気付いていたこと


けれど、どうしても認めたくなくて、認めることができなくて


その核心を、悪足掻きで否定していた



お父様とお母様が───消えていた


跡形も無く、まるで、初めから存在していなかったかのように



『……おや、私たちは、いったい何をしていたんだ……?』


『何言ってるんだ。 処刑を見に来た……んじゃ、ない、か……

え……どうして、そんなことを……?』


動きを止めていた群衆が、動き出した
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