全てが終わりを告げる時
時が再び───刻まれ始めた



皆口々に、何故あんな残酷なものを楽しんでいたのか。 そう呟き、首を傾げている



ふと、頭の中に一つの記憶が浮かび上がった


それは昔、魔法に関する本を読んでいた時の記憶



とある一冊の、一番最後のページに、記されていた言葉



〝魔法使いが死した時、その魔法使いのことを人間は忘れる。


夢でも決して思い出せないほどに、その記憶は洗い流され、削除される。


それに伴い、その魔法使いが関わった歴史は、全てが作り変えられていく。


人間が、何びとたりとも違和感を抱かぬように、辻褄が合わせられる。〟と



一度、物陰に隠れてローブを脱ぐと、再び群衆の中へ戻り、近くにいた一人の人間に声をかけた


『あの……すみません』


『はい、何でしょう?』


目の前の彼女がこちらを見る


意を決して、彼女に問いかけた


『……この村に、〝睡眠治療〟で有名な診療所は、ありませんか……?』


『睡眠治療? さあ……聞いたことないわね』



頭を、鈍器で殴られたような衝撃に襲われた


その後、何人かにも聞いてまわったが……答えは、同じだった


その中には、以前、診療所に訪れた人間もいたが、病のことを聞くと、


〝神頼みをしていたら治ったのだ〟と、そう言われた



あの本に記されていたことは、


紛れもなく、認めざるを得ない───事実だった
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