全てが終わりを告げる時
「それじゃあ、また何かあったら、ここに来て報告するように」


「ええ。 それじゃあ」


席を立ち、一度、片手をひらりと振ると、再びエレベーターに乗り込んだ



綾瀬実栗の、どんなに些細な言動も、見落とさないようにと、心に決めながら───





ウィーンと、エレベーターが上へ向かう機械的な音がする


その音が止まったと同時に、エレベーターの扉を見つめていた慎也は、柚希へと視線を移した



「柚希はどう感じた?」


「うーん…………はっきりと断言はできないんだけどね?

輝祈、この件に関して思い詰めてるみたい

恐怖で怯弱になってる気を感じたよ


それに、昔のことを思い出したっていうのは……」


「きっと、ご両親が亡くなられた時の───魔女狩りの時のことを、何かの拍子に思い出してしまったんだろう」


柚希がそっと目を伏せる



「……輝祈は近いうちに、きっと夢を見る

〝最後の魔女狩り〟という、過去の悪夢を……」


そして、悔しそうな表情を浮かべながら柚希が続ける


「それでも輝祈は、やっぱり僕らには話さないんだろうね、そのことを

何度も思い出しては傷付いて

誰に相談するでもなく、自分の中に溜め込んでいく

今まで何度、それを繰り返して来たんだろう……」


「幾度となく悪夢を繰り返し見てきたこと、

輝祈は必死に隠し通しているみたいだから、僕達ができることは無いけれど……」


『どうか、心を壊してしまわないで』


二人はそう、強く願った
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