全てが終わりを告げる時
……否、今こうして肩を掴まれるまで、未來は怒ってなどいなかった


今朝会って挨拶をした時も、授業の合間の休み時間に、話をしていた時も……


つい先程まで、いつも通り、人当たりの良い笑みを浮かべていたはずだ


今朝からのことをもう一度振り返っても、その答えは出ない


ならば、何故……?



「それなら、どうして……?」


暫く考えた挙句の果てに出た問いに、未來は大きな溜め息を吐いた


人には吐くなと言っていたくせに



「私が怒ってるのはね……

輝祈が何かを悩んでいるのに、私に何も相談してくれないこと!」


「……え?」


未來が怒気を含んだ声で言う


言われた私は、驚きの声を上げて、固まった



悩んでいることに、気付いていたのか、と


これまで通り、普通に振る舞っていたと思っていたのに


隠しきれて、いなかったのか


いつの間にか、この甘ったるい世界に慣れて、子どもの頃のように、なってしまっていたのか、と


「どうして、それを……」


「気付いてないとでも思ったの?

輝祈は、いっつもポーカーフェイスだけどさ、伊達に何年も、一緒にいたわけじゃないんだからね?」


それから少しの間を置いて


「たまには私に頼ってよ

秘密主義な輝祈のことだから、私に話せないこともあると思う

でも、全く頼られないのは、ちょっと寂しいからさ」
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