全てが終わりを告げる時
「……うん……ありがとう」


未來の言葉に一瞬驚いたが、その一言を言い直せば、未來は更に嬉しそうに笑みを深めた



「だからね?

輝祈のことだから、皆の知らないところで、無理も無茶もいっぱいしてると思う


けど、一人で溜め込み過ぎないで

そんなことすると、いつか輝祈が耐えきれなくなって壊れちゃうよ


私の知らない、輝祈の大切な人にでもいい

辛い時、苦しい時、悲しい時、寂しい時……

誰にでも構わないから、誰かに頼って」



ひとつひとつの言葉が、スッと胸に溶け込んでいく


ああ……とても温かい


それは、外側から伝わってくるような温かさではなく、内側から溢れ出すような温かさ


その正体は分からないが、ずっと感じていたい、そう思わせるような感情


この気持ちは、何なのだろう


「……うん」


「よしっ、じゃあ約束!」


そう言って差し出された小指に、自身のそれを絡めた


涙が何故、溢れたのかは分からない


けれど確かに、胸は温かくて


そして、その温かさが心地よくて


聞き馴染みのある、指切りの歌を聞きながら、目の前で歌う彼女を見て、自然と顔が綻んだ



───溢れ出す、何か優しく、温かく……どこか懐かしい、感情


顔が自然と綻ぶような感情


それが、両親が亡くなって以来失われていた、〝喜び〟や〝嬉しさ〟だということを

今の私は、まだ、知らない───
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