全てが終わりを告げる時
慎也は静かに耳を傾けている


「……綾瀬実栗の監視という任務は認めるわ

警視総監や自衛隊長の指示では仕方がないもの

けれど、私のことは守らないで

お願いだから……それだけは約束して……」


「……うん、分かった」


私の心情を読み取ってなのか、慎也は明るく了承した



「───さて、昼休みもそろそろ終わる頃だね

教室へ戻ろうか」


慎也がゆったりとした足取りで歩き出す


丁度横を通った時、私も踵を返し、隣に並んで歩き出した



「あーあ、教室へ戻ったら、また大勢に囲まれるんだろうなぁ

ねえ輝祈。 どうして人間は、新しいものに手を伸ばしたがるんだろうね?」


空気を変えようとしてくれているのだろう


慎也は困っているような、そして、ふざけるような口調で言った


その質問にクスリと笑みが漏れる


「あら、慎也は違うの?」


「いいや、僕も同じ種族だから、全くの別ものとは言わないよ

僕が得意とする勉強だって、その人間の〝好奇心〟からできているものだからね

でもさ、転校生だからといっても、ある程度のことは把握しているんだから、少しくらいは一人の時間が欲しいな」



やれやれ、と溜め息を吐く慎也を見て思う



彼がこの学校に来た理由が、たとえ仕事のためであるとしても、


世界を揺るがす危機の魔の手が、刻一刻と忍び寄っているとしても、


この平穏な時間が、ずっと続いていてほしい、と───
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