全てが終わりを告げる時
〝力〟を持つ者以外から……


つまり、この男は何かしらの術者なのだろう


姿が見える理由は判明した


しかし、何故、お父様とお母様を覚えているのか


あの文献には確かに、記憶から削除されると記されていたというのに……



「……君が得ているその情報は、もしかして、とある文献に記載されていたものではないかい?」


「そう、だけど……」


「なるほど。 実はね、あの文献は初期の物、つまり、少々古いんだよ。

だから、当時に解明されていなかったものは仮説として記されているし、間違いも含まれているんだ。

正しくは、『人間の記憶から削除される。但し、深く関わった人間を除いて』なんだよ」


「深く関わった……人間……」


私が繰り返すと、男はにこやかに頷く


「そう。 つまり、雛桜家と僕の家系は、深い関わりを持っているのさ」


そう口にした後、一度空を見上げた男


「そろそろ日が落ちる頃だね

ここにいては冷えるだろうし、詳しい説明をすることも兼ねて、僕の家へ行こう」


お父様とお母様を覚えていたことから、男が嘘をついていないことは分かる


こくりと頷くと、涙を拭い、立ち上がった


「……あ、そうそう、まだ名乗っていなかったね。

僕は王寺暁人(アキヒト)。 暁に人で、暁人だ。

よろしく頼むよ」


それが、私と王寺家の出会いだった
< 67 / 133 >

この作品をシェア

pagetop