全てが終わりを告げる時
『それほどまでに、危険を伴う仕事なんだ』


先程までの微笑が姿を消し、その寂しげな表情が、そう語っていた



当主が亡くなり、世代が移り変わる───その繰り返しを、

両家の者は、それぞれ見てきたのだろう


そして、王寺暁人も例外ではなく、お父様とお母様が死にゆく姿を、どこかで見ていたのだろう


胸が矢に貫かれたような痛みを覚えた



「……今回の盛大で最悪な魔女狩りはね、一人の老婆によって起きてしまったことなんだ」


「───え?」


唐突に切り出された話に、持ち上げかけていたティーカップを、ガチャッとソーサーに落としてしまった



「村の外れに住む老婆の家は、森に面しており、更には周辺の家々と距離があったことから、魔女だと疑われた。

容疑をかけられた老婆は、錯乱状態に陥り、知っている村人の名を、次々と揚げていった。

その揚げられた人間もまた、別の人間の名を口にしていく。

……結果、犠牲者はネズミ算式に増えていき、輝祈の両親も揚げられてしまったんだ」


幸い低位置だったため、割れることはなかったが、紅茶の水面がぐらりと揺らぐ


まるで……今の私の感情のように



「今の話を聞いて……

輝祈は、人間達の愚かさを恨むかい?」


水面は今も尚、揺らめいている


そして、私の心もまた、揺らめき続けていた
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