全てが終わりを告げる時
……正直、自分の行動一つで人が救われ、もしくは犠牲となる


そう考えるだけで、自分の行動が、判断が恐ろしい


私がこの仕事を請け負うことによって、その重大な責任を背負うことになるのなら、逃げてしまいたい


そう思っている自分が、どこかにいる


けれど、もし私が何もしなければ、人間達は運命に従い、絶望へと突き落とされる


そして反対に、私が持つ〝力〟を使えば、運命をほんの僅かにでも変えることができる



この〝力〟で、誰か一人の運命でも変えることができるならば


誰か一人でも救うことができるならば


この仕事で、運命に抗おう


そう、思ったのだった



「……そうか。

流石は雛桜家の子だね。

あの二人とよく似ているよ。

その意志の強さも、それを象徴する瞳も」


王寺暁人の藍色の瞳に、私の菖蒲色が溶け込んだ


「では改めて……

これからよろしく、輝祈」


「はい、こちらこそよろしくお願いします、王寺あき……

……何とお呼びすればいいでしょうか」


脳内と同じく、フルネームで呼ぶという失態に気まずさを感じる


「ははっ、まさかフルネームだったとは。

そうだなぁ……呼びやすさも兼ねて、アキ、とでも呼んでよ。

それに、年は違えど仕事仲間なんだし、敬語なんて堅苦しいからいいさ」


しかしながら、王寺暁人は、さして気にする様子もなく、可笑しそうに笑いながらそう告げた
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