全てが終わりを告げる時
仕事をするにあたって、幾度となく移住を繰り返し、世界各地を巡ってきた


そして私は、はじめのうち、行く先々で、救えなかった犠牲者に、その土地の人間との別れに、涙を流していた



『その地の物に、人に、執着してはならない』


数年経ったある時、アキにそう言われた


厳しい口調ではあったが、その裏には優しさが込められているのを感じた


悲しみと罪悪感で、いつか私が壊れてしまわないように───



それから私は、土地の人間と、必要以上に干渉しないようにした


たとえ相手の方から近付いてきたとしても、冷酷に突き放した



自分自身も、相手も傷付く選択


それを承知の上で、何度でも繰り返した


何故なら、アキの切実な願いであったから


そして、どんなに悩んでも、それ以外の解決策は、思いつかなかったから───



程なくして、アキは命を落とした


強い魔物の討伐中に大怪我を負い、出血多量で亡くなったのだ


私は悔やんでも悔やみきれなかった


目の前の魔物との戦闘に必死で、背後まで気を配れなかったために


そして、背後から迫り来る魔物から、私を庇って、アキが負傷したために───



私より、二つ年下だったアキの息子に、全てを告げた


そして地に頭を押し付けて、何度も謝罪した


彼は一度も、私を責めることはなかった


『それがお父さんの運命だったんだよ』と、優しい声色で言っていた
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