全てが終わりを告げる時
意味の無いことだと分かっている


人は誰しも、独りで生きてゆくことなどできないのだから



けれど私は、人々を守るためにも、独りで生きられるように、ならなければならないのだ


何百年もの時を経て考え続けても、強くなる以外に、守られなくなる方法が分からないのだから───



私のために生涯を終える、王寺家の人間を見続け、何度この命を捨ててしまいたいと思っただろうか


魔法使いとは、意識せずとも自身の傷を瞬時に癒す存在


故に、自殺を図るのは容易いものではないが、しかし、できないわけではない


けれどいざ、この命を絶とうとすると、最後に脳裏を過ぎるのはいつも、お父様のあの言葉なのだ


『いつか、仲間とともに、最強の敵と、その力を交えることになる』


その〝いつか〟は、未だ訪れていない


どんなに苦しかろうと、その最強の敵が現れるまで、私が死ぬことは許されないのだ



そんな苦しみを抱え、生き永らえること数百年



凄まじい勢いで燃え盛る、王寺家の家屋の中で、私は最後の陰陽師と───最後の仲間と、出会った



迫り来る炎と恐怖に蹲る、僅か10歳の少年陰陽師───王寺慎也


そして、狗神(イヌガミ)本来の姿で、慎也を守るように包み込む妖───八重瀬柚希



最後の陰陽師である、慎也が生きているうちに、最強の敵は現れる


竜闘虎争は、もう間近に迫っている
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