全てが終わりを告げる時
路地に響く唯一の音は、二人の高さの違う靴音のみ


私も倉渕羽津摩も声を発することは無く、二人の間には沈黙が流れ続けている


二人で薄暗い路地を黙々と歩み続けるのは、心底居心地が悪かったが、だからと言って、何かを話す気など毛頭なかった



進み続けることおよそ15分


目的地である建物に漸く到着し、開放感に小さく息を吐いた


そして振り返れば、依然として倉渕羽津摩は私の後ろに立っている



やはり彼は───能力が覚醒したのか



人間は誰しも、生まれながらにして、ある程度の〝力〟を持っている


だが人類の進歩により、野生からかけ離れていった人間達は、現在、その〝力〟が覚醒することなく生涯を終えるパターンが殆どなのだ


そして、その〝力〟が覚醒すると、人間は何らかの能力を手に入れる



他の能力者は消滅したが、新しく誕生したのなら話は変わる


半強制的にはなってしまうが、近い未来に訪れる世界の危機を脱するために───倉渕羽津摩にも、この組織へ加入してもらう



「……あー、雛桜。

ここはいったい何なんだ?」


今まで黙っていた倉渕羽津摩が口を開いた


「家の中でお話しします。

どうぞこちらへ」


倉渕羽津摩の問いには答えず、私は家の中へ足を踏み入れた



カウンターを挟んで向かい側に立つ、ローブの男が言う


「いらっしゃいませ。

失礼ながら、お名前と証をどうぞ」
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