全てが終わりを告げる時
「……ねぇ、慎也?

毎回思うのだけど、この路地には、慎也の術がかかっているわ。

それに、慎也も柚希も、常にこの家にいて、やって来るのは私くらいのものでしょう?

その名前の確認と証の提示というのは、必要なことなの?」


目の前のローブの男は、不気味な笑い声を上げる


「ふふふふ……ははっ……

いいじゃないか、輝祈」


そして男は、フードをそっと下ろした


「僕は形から入るタイプなんだ。

それに、僕はまだ17……ふざけたがる年頃の子どもなんだよ?

少しくらい子どものお遊びに付き合ってくれてもいいだろう?」


「はあ……まったく……」


「───なっ! 王寺慎也、だと!?

さささっきの声は、誰がどうく、どう聞いたって、ち、中年の男のものだったじゃないか!!」


私に続き、家の中へ入っていた倉渕羽津摩は、私の呆れの声を遮り、そう叫んだ


何度も噛む驚きようは尋常ではなく、常に冷静沈着だと生徒達に謳われている、生徒会長の面影は、微塵も残っていない


そのやたら大きく、よく通る声に、近くの私は耳を塞ぎたくなった



「……おや? その〝馬鹿でかい〟声の持ち主は、どうしたんだい?」


私よりは離れているにしろ、それなりに近い距離にいた慎也は、

馬鹿でかい、を───更に言えば、『馬鹿』を一際大きくして言った


『耳障りだ』という心の声が、聞こえた気がした
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